鍛造事典

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鍛造部品の後処理について④ 鍛造後の表面処理 Ⅱ(各種電気めっき)

金属表面に各種電気めっきを施すことで、耐摩耗性・耐食性等の特性を付加することが可能です。

表面処理(除去加工)や切削加工を行った後、各種「付加加工」の表面処理を行います。付加加工には、電気めっきのほか、アルマイト処理・各種化学的処理・塗装等があります。この項では、各種電気めっきについて解説します。

金属部品を陰極として金属イオンを析出させ、めっき膜を生成

電気めっきの方法は、めっきしたい金属イオンを含む水溶液中で、めっき対象品を陰極(-極)として、めっきしたい金属を陽極(+極)として電解を行います。陰極表面では、電解液中の金属イオンが析出し、めっき膜となります。陽極では、電解液中に陽極の金属が溶解することで、めっきの元となる金属イオンが補給されます。

電気めっきの原理

亜鉛めっき処理

防錆・防食を目的に、鉄のボルトなど多くの機械部品に利用されています。亜鉛めっきだけでは皮膜の耐食性に劣るため、通常はめっき後にクロメート処理を行います。硫酸や硝酸を含む無水クロム酸に10秒ほど浸けることで、防食性のほか光沢や彩色効果を得るもので、亜鉛やアルミニウムにも適用されます。

亜鉛めっきの後処理
後処理の種類 外観色調 使用条件・目的
ユニクロ 青銀白色 防錆。低価格で量産品に最適
クロメート 虹色 耐食性を重視する場合
黒クロメート 黒色 耐食性・耐候性を重視する場合

亜鉛めっき処理の目的

  • 鉄製品等の防錆性の向上
  • 鉄製品等の防食性の向上

工業用クロムめっき処理

電気メッキの中ではHv800~1,000と最も高硬度で、めっき厚が厚い(2~100μm)ことから、装飾用のニッケルクロムめっきと区別して「工業用クロムめっき」と呼ばれています。さらに、耐摩耗性が向上し、耐食性も高まるため、工業的な利用価値が大きく多用されています。

工業用クロムめっき処理の目的

  • 耐摩耗性の向上
  • 耐食性の向上

ニッケルめっき処理

優れた耐食性を示すニッケルは、硬度も高く、色調も良く変色しにくい上、密着性にも優れた良好なめっきが得られます。そのため、防食のみならず装飾にも活用されています。

ニッケルクロムめっき処理

仕上げの化粧めっきとして施される、ニッケルクロムのごく薄い(0.5μm以下)めっきです。ピカピカの光沢が特徴で「装飾用クロムめっき」とも呼ばれ、主にニッケルめっきの保護膜として耐食性と光沢を必要とする製品に使用されます。

ニッケルクロムめっき処理の目的

  • ニッケルめっきの保護膜形成
  • ニッケルめっきの耐食性の向上
  • ニッケルめっきの光沢の付加

黒色クロムめっき

無水クロム酸を化学反応(酸化)させて黒色にするメッキで、漆黒調の高級感ある外観が得られます。耐摩耗性に乏しいものの、耐食性や耐熱性等に優れており、高級カメラの軍艦部等に採用されています。

黒色クロムめっきの目的

  • 漆黒調の外観
  • 耐食性の向上
  • 耐熱性の向上

金めっき

耐食性が極めて高く、電気伝導性が高い等、優れた特性を活かして、電気接点、コネクター等に採用されています。

金めっき処理の目的

  • 耐食性の向上
  • 電気伝導性の向上

銀めっき

美しい外観、高い耐食性や電気伝導性を活かし、装飾品や電気機器部品、精密機械部品、洋食器等へのめっきとして多用されています。

銀めっき処理の目的

  • 耐食性の向上
  • 電気伝導性の向上

銅メッキ

ニッケルめっきやニッケルクロムめっきの下地めっきのほか、高い電気伝導性を活かし、端子や放電加工用電極等、さまざまな用途に使われています。

銅めっき処理の目的

  • ニッケルめっき等の下地
  • 電気伝導性の向上

スズめっき

銀色の光沢が美しいスズ。融点は232℃と低く、はんだ付けのの下地のほか、はんだめっきとしてコネクターや各種電子部品の接合等にも使用されています。

スズめっき処理の目的

  • 装飾
  • はんだ付け性の向上
  • 電子部品の接合

これまで説明しためっきの種類と、それぞれの特長について、表にまとめました。

めっきの種類と特長
耐食性 装飾性 耐摩耗 潤滑性 電導性 防錆性 熱伝導 絶縁性 半田付 抗菌性
亜鉛
ニッケル
Ni クロム
黒クロム
無電解Ni
硬質クロム

電気めっきの解説は以上です。次項「鍛造部品の表面処理 Ⅲ」では、アルマイト処理・各種化学的処理・塗装等について解説します。

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