鍛造事典

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鍛造部品の後処理について② 鍛造部品の熱処理

アルミニウム・鉄鋼鍛造品等は、表面処理を行う前に熱処理を行うことで、さまざまな組織改善を実現できます。

アルミニウムや鉄鋼鍛造品等については、鍛造後、表面処理を行う前に熱処理を行います。これにより組織改善を行い、強度・硬度等を調整することが可能です。

各種熱処理により、鍛造品の強度・硬度を調整

この項では、アルミニウムと鉄鋼の鍛造品についての熱処理をまとめました。

アルミニウム鍛造品の熱処理

アルミニウムにおいては、規定の温度に加熱する「溶体化処理」を行った後、焼入れ(急冷)し、その後、比較的低い温度で一定時間加熱する「時効熱処理」を行って強度を高めます。アルミニウムには、1000番台~7000番台までさまざまな材質があるため、それぞれに合わせて異なる熱処理が必要になります。

アルミニウム合金の質別記号、調質記号(展伸材)
質別記号 処理の内容
F これは押し出しや圧延したままの状態、つまりアルミ材を製造したままの状態で、調質を行っていない状態を示します。製造工程からそのまま出てきた材料はこの状態になります。
O オーは、完全に焼きなまし処理をして軟化させたものを示します。非熱処理合金についてもこの処理を行うことがあります。
H 加工硬化したものを示します。金属は力を加えると硬化する性質を持ち、これを加工硬化といいます。この性能を活用し、任意の硬度に調整が可能です。
W 溶体化処理(固溶体化処理)のあと、常温で自然時効する合金のことです。不安定な質別とされます。
T 溶体化処理(固溶体化処理)、時効処理などの熱処理をしたものです。
T3 溶体化処理(固溶体化処理)の後に冷間加工し、自然時効させたものをいいます。次のT4材に比べ強度を強くするためと、平坦度や寸法精度を出すために冷間加工の工程が入っています。
T4 溶体化処理(固溶体化処理)の後に自然時効が終わった状態のものをいいます。
T5 高温加工で冷却後、人工時効処理したものをいいます。溶体化処理(固溶体化処理)時に焼入れ感受性が低いタイプに用いられます。
T6 溶体化処理(固溶体化処理)の後に人工時効したものです。この処理の後に、寸法制度の向上やサイズの矯正を目的に冷間加工を行なったものについてもT6をつけてもよいことになっています。
T7 溶体化処理(固溶体化処理)の後に安定化処理をしたものを言います。応力腐食割れを防ぐためや焼入れによって発生する変形などの防止するために行ないます。
T8 溶体化処理(固溶体化処理)と、人工時効処理の間に、冷間加工のプロセスが入っているものです。
T9 溶体化処理(固溶体化処理)と、人工時効が終わった後に冷間加工したものです。

鉄鋼鍛造品の熱処理

また、鉄鋼鍛造品についても、次のような熱処理を行うことがあります。

鉄鋼鍛造品の熱処理
主な適用材料 目的 特徴
焼入れ 工具鋼
機械構造用鋼
鋼を硬くする 硬質化・強度・耐食性・耐疲労性の向上
焼戻し 工具鋼、ばね鋼
機械構造用鋼
ダイス鋼
鋼を強靭にする 残留応力の緩和焼入れ硬さ調整
靭性強度調整
焼鈍(なま)し 工具鋼、ばね鋼
機械構造用鋼
ダイス鋼
鋼を柔らかくする
加工しやすくする
残留応力除去(アニール処理)
金属組織の軟化
切削性の向上
焼準(なら)し 機械構造用鋼 鋼の金属組織を均一化する 焼入れ、焼鈍(なま)しの前処理
結晶粒の整粒化
塑性加工組織改善
固溶化処理 オーステナイト系
ステンレス鋼
耐食性を保つためにクロムの析出をさせないように再固溶させる 合成成分を溶け込ませる(溶体化処理)
残留応力除去
析出硬化処理の前処理
浸炭・浸炭窒化処理 低炭素鋼 炭素や窒素を表面に侵入させて、焼入れ性の向上と安定を得る 表層部は炭素量が多いため硬く、内部は少ないため柔らかく、耐摩耗性と靭性が得られる

以上のような熱処理を終えた部品の表面には、酸化膜(黒皮)が生成されます。これを、次項で解説するさまざまな機械的・科学的方法(除去加工)によって除去します。

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