鍛造について③ 鍛造の種類Ⅱ(熱間鍛造と冷間鍛造)
鍛造品は、加工温度により「熱間」「冷間」鍛造に分類され、それぞれのメリットを活かしてさまざまな用途に使用されています。
前ページに続いて、鍛造の種類を解説します。型鍛造は、その加工温度により熱間・冷間・温間鍛造の3種類に分類され、加工品それぞれのメリットを活かしてさまざまな用途に使用されています。
「再結晶温度」以上に加熱する熱間鍛造と、常温下で加工を行う冷間鍛造
金属は、ある温度以上に加熱すると柔らかくなり、歪んだ結晶が正常な結晶に変化します。これを「再結晶」と言いますが、「熱間鍛造」とは、この「再結晶温度」以上に熱せられた金属に対して行う鍛造を指します。一方、鉄を熱せず、常温下で加工を行うものを「冷間鍛造」と呼びます。これらのほか、中間温度で両方のメリットを量る「温間鍛造」もあります。
熱間鍛造
熱間鍛造では、金属製品を「成形」すると同時に、「鍛錬」によって、素材金属を遥かに上回る高い強度と靱性を得ることができます。
熱間鍛造に適した温度は、鉄の場合、一般に1100~1250℃、真鍮は700~750℃、アルミニウムでは400~450℃ぐらいです。この時、プレス機で材料の上下に金型を当てて圧力をかけると、金型形状通りに加工することができます。但し、加熱による酸化皮膜(※用語解説参照)が発生するため、プレスを行った後、これを除去する工程が必要になります。
熱間鍛造の主な用途
熱間鍛造は、高強度な鋼材であっても比較的低い荷重で鍛造できるため、大型部材や高強度材料、もろい材料等から成る部品の製造に最適です。
- ガス器具
- バッテリー端子
- 高圧シリンダー、安全弁
- 電磁弁
- 高圧バルブ
- 産業機械、特殊機械
- 高圧ポンプ
- 電気設備 etc...
用語解説
酸化皮膜 | 金属表面が酸素と反応することによって生じる膜。いわゆる黒錆であり、「黒皮」とも呼ばれる。 |
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冷間鍛造
常温下で加工を行う冷間鍛造では、高温からの冷却による材料の熱収縮が起きず、部品表面に加熱による酸化皮膜も発生しないため、寸法精度が高く、表面が比較的綺麗な製品ができ、鍛造後の機械加工もほとんど不要となります。
しかし、材料の硬度が高い常温の状態で鍛造を行うため、金型に約1~3GPaに及ぶ大きな応力が作用し、金型を損傷する可能性があります。そこで、鍛造前に材料のボンデ処理(※用語解説参照)を行い潤滑を高めながら、単純形状品や非鉄金属では1回、複雑形状品においては2~3回に分けて目的の形状に導いていきます。したがって、複雑形状品を成形する場合は複数個の金型が必要になり、ロット数量が少ないケースでは採算性が悪化する傾向があります。また、どのような途中形状を経て目的の形状に到達させるか、高度な技術と経験も同時に求められます。
表面の仕上がりや寸法・形状精度では冷間鍛造が、複雑形状や大型部品の加工については熱間鍛造が、それぞれ優れていると言えます。
冷間鍛造 | 熱間鍛造 | |
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表面の仕上がり | ◎ | ○ |
寸法・形状精度 | ◎ | ○ |
ロット | 大ロット | 大中ロット |
複雑形状 | ○ | ◎ |
大型部品の加工 | × | ◎ |
完成品に近い「ニアネットシェイプ」加工も可能
冷間鍛造では、高強度な鉄鋼に対しても、鍛造後に切削・研磨等の後加工をする必要のない「ニアネットシェイプ」の加工も可能で、主に各種エンジンや高温ガスタービン、自動車シャーシ部品等の製造にも使われています。
その他、真鍮、鉄、銅はもちろん、ステンレス鋼、チタン合金、工具鋼等の高強度な難加工材を冷間鍛造で加工することも可能です。
冷間鍛造の用途
冷間鍛造は、ボルト、ナットをはじめ、自動車のトランスミッションのギヤやシャフト、ボールジョイントなど非常に広い分野で使われています。
- ボルト、ナット
- 自動車用部品
- 人工骨
- 医療用機器
- 耐熱部品
- アルミニウム容器
- 燃料電池ケース
- 釣具リールetc...
用語解説
ボンデ処理 | 材料の表面にリン酸塩皮膜を生成し、潤滑を高める処理のこと。鍛造時の摩擦を軽減し、焼付き防ぐことができる。 |
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