鍛造について⑥ 鍛造可能な金属材料Ⅰ(真鍮(黄銅)・銅・アルミ)
鍛造可能な金属には、鍛造加工性に優れた真鍮(黄銅)材や、さまざまな特性を持つ銅材・アルミ合金材等があります。
鍛造加工が可能な金属材料の種類について説明します。鍛造において最も基本的な材料である真鍮(黄銅)材や、さまざまな優れた特性を持つ銅材・アルミニウム合金材の特徴と用途についてご紹介します。
展延性や熱・電気伝導率、軽さなどそれぞれの特性を活用
金属はその種類によって、電気・熱伝導率や耐食性、そして、加工のしやすさに関連する切削性、展延性(※用語解説参照)など、さまざまな特性があります。また、元の金属に他の金属を添加して合金化することで、求める特性を得ることも可能です。鍛造においても、部品の用途に応じて最適な特性を持つ金属材料を選択することが大切になります。
真鍮(黄銅)材
真鍮(黄銅)材は、適度な強度を備えながら、優れた鍛造加工性を持ち、非鉄金属では最も多用されている金属です。さらに、高い切削性も併せ持つことから、産業界のあらゆる分野の部品に活用されています。中でも、鍛造用黄銅棒(C3771)は展延性に優れ、熱間鍛造によって複雑な形状の鍛造が可能。さらに、切削も容易なため、加工性の高い材質として多様な用途に使われています。
真鍮(黄銅)材の主な鍛造製品用途
- 各種バルブ
- 機械部品
- ガス機器
- 電磁弁
- 高圧ポンプ・シリンダー
- 水栓金具
- エアコン室外機
- 船舶用部品
- 電設機器
- スチームトラップ等
- レーザー、ロボット機器 etc...
銅材
金属の中で、銀に次いで高い電気伝導率を持つ銅。モーターをはじめ、電気機器の配線、避雷針等への活用のほか、熱伝導率の高さからヒートシンク等の放熱器としても利用されています。
また、銅イオンに抗菌・消毒作用があることから衛生器具等にも採用されるほか、腐食にも強く、熱間鍛造性にも優れるため、複雑形状の製品加工にも最適な材質です。
銅材の主な鍛造製品用途
- 変圧機器等の電気設備
- 圧着端子等の電気設備
- 接続端子等の電気設備
- 放熱器、クライオポンプ部品
- 避雷針部品
- 化学工業用部品
- バッテリー端子
- 電熱機器等 etc...
アルミニウム合金材
アルミニウムは、鉄や銅に比べて非常に軽量であり、マグネシウム、マンガン、銅、ケイ素、亜鉛等との合金によりさまざまな特性を持たせることが可能です。また、耐食性・加工性がよく、熱伝導性も高く、気密性の高い部品を製造可能。また、電気伝導率は銅より低いものの、比重が非常に小さいため、同じ重さの銅に比べて2倍の通電が可能。しかし、材料の展延性が低いのが難点で、中空や複雑形状の鍛造には高度な加工技術力が必要となります。
アルミニウム合金材の主な鍛造製品用途
- 建築物等の構造材
- 自動車・鉄道車両等部品
- 航空機等部品
- 空調機部品
- エレクトロニクス機器部品
- 事務機器
- レーザー機器
- ロボット機器 etc...
用語解説
展延性 | 材料が破断せずに柔軟に変形する性質で、延性と展性に分けられる。展性とは、箔のように平面に広げられる性質で、展性の高い金属には金、スズ、銅、アルミニウム等がある。また、延性とは、材料がその弾性の限界を超えても破壊されずに引き伸ばされる性質で、金、銀、白金、銅などが延性に富む。 |
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