【知識】熱間鍛造における「ダイセット」とは何か?

鍛造について

今回は、熱間鍛造におけるダイセットについて解説します。ダイセットは、文字通りダイ(金型)をセットする装置のことで、鍛造加工メーカー各社の創意工夫や特徴が表れる部分でもあります。

ダイセットとは?

「ダイ」とは金型のことを指し、その金型を保持する器具を「ダイセット」と呼んでいます。

ダイセットは、プレス加工や鍛造等、金型を用いる金属加工全般で用いられますが、ここでは熱間鍛造におけるダイセットについて解説します。

ダイセットの構造

ダイセットの構造は用途や目的により様々ですが、基本的にはダイ(金型)を保持する「ダイセット上型/下型」と、「ガイドポスト」及び「ガイドブシュ」等の部品によって構成されています。

ダイセットの基本構造

・ガイドポスト

ガイドポストは、ダイセット上型/下型の芯合わせをするための部品です。ガイドポストによって上下の型ズレを防止し、正確な嵌め合わせを実現できます。

・ガイドブシュ

ガイドポストを導く円筒状のスリーブをガイドブシュと呼びます。この円筒の中をガイドポストが上下に滑らかにスライドすることで、ダイセットの正確な篏合を可能にします。

ダイセットの役割

ダイセットはプレス機の直下に設置し、圧力を全体で受け止めます。ダイセット上型が下降して、上下の金型がぴったり正確に合わさることで、鍛造加工がなされます。

ダイセットには次のような3つの役割があります。

(1) 金型の固定

第1に、金型のぐらつきを抑え、確実に固定すること。

(2) 加工精度の向上

第2に、ガイドポストとガイドブシュの機構により、金型を正確に上下させること。これにより製品の加工精度を高めることはもちろん、金型の寿命向上にもつながります。

(3) 段取替えの効率化

第3の役割として、段取替えの効率化があげられます。

多品種少量生産が進む中で、スピーディーな金型交換が求められいます。そこで、金型を装着したダイセットをもう1台(場合によっては数台)用意しておき、ダイセットごと交換を行うことで、効率的な金型交換が可能となります。

ダイセットごとの交換による段取替え

■ダイセットと中空鍛造

中空鍛造を行う上でも、ダイセットは重要な役割を果たしています。

中空構造を形成する成形ピン(パンチ)は、ダイセットに取付けることにより金型と一体化し、高精度な中空鍛造加工を実現できます。

下記の写真は、ダイセットに設置された成形ピンです。上下の金型が閉じてワークを加圧した後、水平4方向×垂直2方向から成形ピンを突入させ、ワンショットによる中空鍛造を実現しています。

■ここがポイント!

ダイセットは通常、鍛造プレス機を購入する際にメーカーからセットで購入するのが一般的です。これは、いわば鍛造プレス機メーカーによる「お仕着せ」となるため、鍛造加工メーカーの特色は出にくいと言えます。

しかし、鍛造加工メーカーの中には、中空鍛造が可能なダイセット等へのカスタマイズを自社で行い、独自のノウハウを蓄積しているところもあります。

そういう意味で、ダイセットは鍛造加工メーカー各社が工夫を凝らす「腕の見せ所」でもあるのです。

さて、次回記事では、特別仕様のダイセットを使用した「中空鍛造」の加工事例について詳しくご紹介いたしますので、ぜひご参考になさってください。

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